保護者・先生の方へ
ATAWIマイナスは、中学1年「正の数と負の数」を、計算規則の暗記ではなく、意味の理解から計算・活用までつなげることを目指したサイトです。ここでは、設計の考え方と、数学的な根拠、使っている見方(モデル)の限界を説明します。
設計の考え方
- 疑問 → 見る → 動く → 予想する → 発見する → 数式になる → 自分の言葉で表すの順に進みます。「公式 → 説明 → 練習」を基本構造にしていません。
- 全編を通して、数直線と矢印を共通の見方にしています(0=基準、点=今いる場所、矢印=変化、矢印の向き・長さ=変化の向き・大きさ)。章ごとに比喩を変えないことで、加法から除法まで同じ見方で説明できます。
- 各章に「小学校とのつながり」を置き、算数の四則計算との関係を示しています。
- 冒頭で
−1−(−3)=2の「なぜ?」を問い、最終章で同じ式に戻ります。
使っている見方と、その限界
| 見方 | 使う場面 | 限界(サイト内でも明示しています) |
|---|---|---|
| 数直線の上の移動 | 加法・減法 | 「右がプラス」は描くときの約束で、負の数の定義ではない。縦の数直線では上がプラス |
| 0で折り返す(反対の数) | 大小、絶対値、減法、乗法 | 直感のためのモデル。根拠は下の定義と法則 |
| +1と−1の打ち消し | 異符号の加法 | 補助の見方として一度だけ紹介 |
| かけ算の表の延長(パターン) | 乗法 | 規則性の発見であって証明ではない。証明は分配法則 |
| 「×(−1)=反対にする」 | 乗法 | 直感モデル。「借金×借金」のような説明は使いません |
教育研究では、負の数を完全に説明できる単一のモデルはないことが繰り返し指摘されています。そのため、モデルの限界を明示し、形式的な根拠を並べて示す構成にしました。0で折り返す対称性を強調した学習が、未習の問題への転移で優れていたという研究(Tsang ほか, 2015)も参考にしています。
数学的な根拠
子ども向けの画面は直感的な説明にし、各章の「数学ではどう考える?」で次の根拠を示しています。
- 減法の定義:a − b = a + (−b)
- 反対の数:a + (−a) = 0、したがって −(−a) = a
- 絶対値:数直線上での0からの距離(「マイナスを消す操作」とは説明しません)
- 乗法:分配法則から 0 = (−1)×(1+(−1)) = −1 + (−1)×(−1)、よって (−1)×(−1) = 1。また (−1)×a = −a
- 除法:0でない数による除法は、乗法の逆
ページに出している式は、生成のたびにすべて自動で検算しています。文字を含む法則は、−6〜6 の整数をすべて代入して確かめています。
よくある誤解と、サイトでの扱い
| 誤解 | 扱い |
|---|---|
| 「マイナス = 左」「マイナス = 悪い」 | 縦の数直線を並べ、向きは約束だと示す(第2章) |
| 「たすと必ず大きくなる」 | たす数を1ずつ減らす表で確かめる(第6章) |
| 「ひくと必ず小さくなる」 | ひく数を1ずつ減らす表で、負の数をひくと大きくなることを確かめる(第9章) |
| −5 は −3 より大きい(0から遠いほうを大きいと思う) | 大小は位置、絶対値は距離と分ける(第3・8章) |
| 絶対値 = マイナスを消すこと | 0からの距離として定義する(第8章) |
| 「マイナスとマイナスでプラス」を加法・減法にも使う(−4−2=6) | 誤答を名指しで取り上げ、「符号が同じ数の乗法・除法の話で、加法・減法の理由ではない」と示す(第9・10章)。理由は標語ではなく、減法の定義と分配法則で説明する |
| −3² と (−3)² を混同する | 「2乗するのは何か」を並べて比べる(第12章) |
| 負号と減法の記号を区別しない | 「どの数か」と「何をするか」で読み分ける(第4章) |
予想の問いと理解確認では、まちがえた選択肢ごとに「どう考えたか」を推し量った言葉を返し、対応する動きをもう一度見せます。
授業・家庭での使い方
- 導入(10分):トップの問い「−1−(−3)=2。なぜ?」を投げかけ、説明できるかを話し合う。
- 各章(1章10〜15分):図を動かす前に予想させ、「どう考えた?」を口頭か紙で説明させる。
- まとめ:最終章で同じ式を説明させ、理解確認で技能と活用を確かめる。
点数・ランキングは出しません。理解確認の結果と書いた文は、その端末の中にだけ保存されます。
学習指導要領との対応
中学校学習指導要領(平成29年告示)第1学年「A数と式」(1) の各事項との対応は、学習指導要領との対応にまとめています。
参考にした研究
- Tsang, J. M., Blair, K. P., Bofferding, L., & Schwartz, D. L. (2015). Learning to "see" less than nothing. Cognition and Instruction, 33(2), 154–197.
- Bofferding, L. (2014). Negative integer understanding: Characterizing first graders' mental models. Journal for Research in Mathematics Education, 45(2), 194–245.
- Vlassis, J. (2004). Making sense of the minus sign or becoming flexible in 'negativity'. Learning and Instruction, 14(5), 469–484.
- Stephan, M., & Akyuz, D. (2012). A proposed instructional theory for integer addition and subtraction. Journal for Research in Mathematics Education, 43(4), 428–464.
- Kilhamn, C. (2011). Making Sense of Negative Numbers. University of Gothenburg.